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クラウドがSIベンダーにもたらす脅威とは!!

電話交換手.jpg

その昔、各企業に大規模な電話交換機が設置され、企業内には電話交換手と呼ばれる人が大量に配置されていた。

時代は進み、手動交換から自動交換となり企業内で仮想施設網が引けるようになり、最近では小型の弁当箱のPBXが設置され年数回のメンテナンスのみで良くなった。電話交換機を販売している産業は廃れ、電話交換手も世の中にほとんどいなくなった。現在はスマートフォンが主流となり、その業界を構成する企業の中に電話時代の企業は見る影もない。

私は近い将来企業内のITシステムもこのようになるのではないかと読んでいる!!

さて前回「新トレンドを読むには、分析が必要!!」で新トレンドの脅威について記載したが、今回は新トレンドの脅威の中でもクラウドの脅威がなぜシステムインテグレーター(以下SIベンダー)の脅威になるか経営学の観点で再度整理したい。

クラウドについては、言わずもがなであるが、ざっくり言うと、AmazonWebService、MicrosoftAzure、Salesforce.comや日本の大手SIベンダーが大規模なデータセンターを立て、そのリソースやソフトウェアを利用料で課金する仕組みである。

クラウドは何を変化させ、どんな脅威をもたらすのか。


 

1,競争環境を大きく変化させた

今まで日本のSI業界は、ドメスティックな市場で国内企業のみの競争であった。これはシステムの要件を決め導入するには、言語の壁があったこと、そして国内である程度の営業網が必要であったこと、システムの安全な稼働が重きを置かれ、安心できる国内企業に任せたかったなどの理由で国内企業のみの競争であった。

クラウドにより、競争環境でいう競合が変化し、大きく戦略を変化させなくてはならなくなった。しかし日本SIベンダーは、1990年後半のメインフレームダウンサイジング以降大きく戦略を変化させてこなかったため、この急激な競争環境の変化に企業のケイパビリティーが追いついて行っていない状況である。

2,事業経済性(ビジネスモデル)を変化させた

今までのSI産業は、システム要件が決まりそれを請負で開発する受託開発モデルがメインであった。このビジネスモデルは、1ヶ月働くエンジニアの単価を決めそれに利益を乗せて出す、ローリスクローリターンのモデルであった。また労働集約的産業で、不稼働人員を出さないことがKSF(成功要因)であった。

しかしクラウドは、将来を予測し、企業のあるべきシステムを大規模に構築し、そのリソースを拡販するモデルである。

これにより、事業経済性が、「稼働率ビジネス」から「規模の経済」へ変化しまったのである。大規模に投資できるAmazonWebService、MicrosoftAzure、Salesforce.comなどのリソースは、安価に提供でき、日本のSI企業がクラウドを始めたとしても規模で勝てる状況にはならない。

また受託をメインとしてきた企業文化では、先にプロダクトやサービスを作って売ることに変化するのはかなり時間がかかる。マーケティング機能やコールセンター機能はもちろん営業やエンジニアがその発想を変えるには10年以上かかると思われる。

3,プロダクトライフサイクルを消滅させた

今までは、ハードウェアやOSのバージョンが5年〜7年でサポート切れになるため、その度にリプレイスをするといったライフサイクルがあったが、クラウドにより継続的にバージョンアップする方法となりこのライフサイクルがなくなった。これによりシステムの見直しのイベントがなくなったり、システムのスイッチングコストが高くなった。


競争優位の戦略で有名なマイケルポーター氏のファイブフォース分析を行えば、この状況が一目瞭然である。

5F分析2.jpg

※今回は、わかりやすいようにファイブフォースのフレームワークを使ったが、正式な使い方とは異なっている。正式な使い方は、<『競争の戦略』ダイヤモンド社, 1985>をご参照ください。

このように、単純に、システムを単体で構築するものかリソース提供に変わったのではなく、劇的な事業環境が変わってしまったのである。その状況に対し、日本のSIベンダーの大半は、既存の受託開発モデルにしがみつき、新たなモデルに転換できないでいる。

いつの日か、企業の内部には、ITシステムが弁当箱のようなボックスしか残らない日が来るであろう、そしてソフトウェアは先に作りそれを利用料とするモデルへ完全に移行するであろう。

そうなった日に対応するのではもう遅い。社内の文化を変える期間を考慮すると、既に大改革をしなければいけない時期に差し掛かっているのではないか!?

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Takeaway〜クラウドに対応するには、企業内変革が必要だ!!
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